– 日本企業のDevOps動向2019 –
2019年、日本ではバズワードとしての「DevOps」は落ち着きつつあります。だからと言ってどの企業もそれを達成できた訳ではなく、上辺の興味がAI、MobilityやRoboticsなどのイノベーションアクセラレータに移ったに過ぎません。 では実質の「DevOps」はどうでしょう。今年は業界を問わずアジャイル開発が大きく広がりました。しかし、それが「DevOps」まではつながらず、逆に、より一層の二極化が進んでいるように見えます。
最もDevOpsが進んでいる先進グループは、高速にフィードバックループを回さないと競合に負けてしまう、そんな環境に置かれている企業です。スタートアップが多いですが、そこから事業拡大した大企業も含まれています。
一方、DevOpsが進んでいない伝統グループは、アジャイル開発に取り組み始めたばかりの大企業が大勢を占めます。このグループは伝統的なITシステムを多数保有し、それが現在も収益の基盤になっています。ですから危険を冒さず、余力を用いて、まずは安全にアジャイル/DevOpsを学ぼうとします。
しかし、アジャイル/DevOpsが必要である本当の理由を理解していないので、パイロット・トライアルや概念実証から先に進みません。トライアルだから回避できた問題が、実戦になると避けては通れなくなるのです。
ビジネスのスピードを上げる必要がある、そう聞いて「それは間違っている」と言う人はいないでしょう。これまでビジネスのスピードが遅くて良いと言われた時代は一度もありません。私たちはビジネスのスピードは加速し続けるものだと信じています。ですからスピードを上げる本当の理由など、実は誰も良く分かっていないのです。 この世界で物理的な生産は決して無くなりません。そこでは当然リードタイムの限界があります。しかし、ITビジネスはすぐに価値を提供できます。ITビジネスで生き残るための手段は、絶え間ない価値の向上で顧客を満足させ続けることです。価値提供が遅い企業は負けるのです。それが今、ITビジネスのスピードを上げなければならない理由です。
ただ単にアジャイル開発にすればビジネスのスピードが上がる訳ではありません。顧客から見た価値提供スピードを上げるためには、バリューストリーム全体が同じアジリティを発揮しなければなりません。そのためには技術的な問題より社会科学的な問題解決の方が重要なのです。 DASAが提唱する DASAの原則やコンピテンシーモデルは、このようなトラディショナルグループにこそ恩恵をもたらします。2020年はどんな企業が伝統グループを飛び出して活躍するのか楽しみです。 ■ 著者 ■
加藤 稔 氏
NTTコムウェア株式会社DevOpsエバンジェリスト