アジャイルやDevOpsチームに求められる成熟度 〜「DASA成熟度モデル」

チームの成熟度を見るのは難しい

アジャイルやDevOpsでは、「チーム」がとても重要になります。共通の目的とゴール、やり方を共有し、相互補完するのがチームです。チームとは、「同じ景色をいている」と考えると見通しがしやすくなります。チームの作業においては、個人の作業というよりも、チームとしての作業という意識が強くなります。作業に人をアサインしてたときに作業が終わると、「I’m done.」という意識になりますが、チームで作業を一体となって推進していった場合は、作業が終わった際には、「We’re done.」という意識になるはずです。作業も個別ワーク(ソロワーク)だけではなく、ペアワークやモブワーク(チームで一体となって作業を行う)と、状況や作業によって適応させることができるようになるでしょう。

では、チームではない集まりをなんと呼べばいいのかというと、「ワークグループ」という言葉があります。このように言葉で区別をすることは決して本質的なことではありませんが、人が集まると「チーム」と表現する割に実態が伴わないこともあるので、そういう場合は、区別して一旦現場のあるべき姿を考えてみるきっかけにしてみるのもいいでしょう。

さて、チームとはどんなものかについて共通認識を持てたとしても、その成熟度を把握するのはとても難しいと言えます。

目に見えないものをどう見えるようにするのか

目に見えないものに対して、どのようにみえるようにするのかというと、「態度」と「振る舞い」をみていくしかありません。また、「状態」がわかるようになるととてもわかりやすくなるでしょう。

したがって、「状態」を定義して、それらの状態とは、どのような「態度」や「振る舞い」があるのかをカテゴライズできれば、そこから自分たちの「状態」を推し量ることができるかもしれません。

「態度」や「振る舞い」の土台にはおそらく「マインドセット(考え方)」があります。ただ、マインドセットもまた目に見えないものなので、そこは気をつけてください。

DASA DevOpsコンピテンシーモデル

そこで、指針となる成熟度モデルがあります。それが「DASAコンピテンシーモデル」です。



DASAコンピテンシー



これらコンピテンシーには、レベル感が定義されています。

DASA コンピテンシーのレベル

  • レベル1 – 入門
  • レベル2 – 初級
  • レベル3 – 中級
  • レベル4 – エキスパート
  • レベル5 – マスター


スキルエリア、ナレッジエリアのそれぞれについて自分やチームがどのレベルにあるのかを知ることができれば、その後の育成や熟達に役に立つはずです。少なくとも、目標を持って自律的に進めていくきっかけにはなります。

DASAでは、以下の研修や認定資格が設定されています。



研修と認定資格

  • ファンダメンタル:全項目で初級(レベル2)
  • プロフェッショナル:ファンダメンタル+各専門領域で中級(レベル3)
  • DevOpsチームで相互補完:エキスパート(レベル4)を目指す

このように、目標をできるだけ定められ、かつ、実効性があるとチームは結束しやすく、相互作用が促進されます。

DASA QuickScan

DASAでは、各自がセルフチェックでどのレベルに達しているかを理解する QuickScan を無償提供しています。これを実施することで、レーダーチャートにてご自身のレベルを知っていただくことができます。英語ですが、5分以内にできるくらい簡潔なものです。

DASA QuickScan https://www.devopsagileskills.org/dasa-devops-competence-quickscan/

QuickScanで20数問に回答するだけで結果を知ることができます。



 

成熟度モデル

先述したように、項目とレベル感がわかったとしても、自分やチームの状態はなかなか判断できないものです。そこで、DASAでは、成熟度モデルを公表しています。

成熟度モデルダウンロード

成熟度モデルで重要なのは、項目やレベル感ではなく、どのような状態であるか、そこでの態度や振る舞いがどんなものであるかです。それらをわかりやすくしたのがモデルであるに過ぎません。従って、モデルから推察するより、状態や態度・振る舞いからモデルを理解するのが大切です。

以下に示すのは、成熟度モデルの振る舞いと状態を簡略的に示したものです。

スキルエリア



チームの成熟度だけでみると、タックマンモデルが有名ですが、DASAのスキルエリアにおける「チーム構築」でみると、[形成期]や[混乱期]は中級(L3)にマッピングできます。また、[統一期]や[機能期]は、エキスパート(L4)にマッピングできます。

ナレッジエリア


*DTAP: 開発・テスト・受け入れ・プロダクション

それぞれを見ていくと成熟度が上がると、チームで当たり前に実施をできるようになっているのがわかります。また、マスターレベルになると外部規制や組織の制約も吸収できる柔軟性が自己組織化と機能横断で培われているのもわかります。