「部分最適から全体最適へ」 現場チームが掴んだ、AI組織変革の手触り

受講者インタビュー
AIの波が組織の現場に押し寄せる中、エージェンティックAIをどう戦略的に活用し、組織変革につなげるかが問われている。生成AIからエージェンティックAIへと進化が加速する今、単に業務効率化のツールとして導入するだけでなく、人間とAIの協働のあり方そのものを再設計していくための思想と戦略が求められている。

2026年春に開催されたDASA JAPANの「DASA 自律型AI組織変革(エージェンティックAI)ブートキャンプ」第1期に参加した、株式会社NTTデータSMSのビジネス推進本部に所属する鹿内啓恵主任、藤田諒氏、上中太陽氏の3名に、受講のきっかけから現場での気づき、そして組織変革への展望までを伺った。

NTTデータSMS ブートキャンプ受講者

株式会社NTTデータSMS ビジネス推進本部 藤田諒氏、鹿内啓恵主任、上中太陽氏

※ 株式会社NTTデータ SMS…NTTデータグループ唯一の「運用管理(ITSM)」特化企業として1995年設立。官公庁・金融機関などの社会インフラを支えるシステムを24時間365日体制で守り、システム運用コンサルティングや自動化ソリューションも提供するITサービスマネジメントのプロフェッショナル集団。

現場を横断的に支え、全社視点でシステム運用高度化を担う組織に所属する鹿内啓恵主任、藤田諒氏、上中太陽氏。日々AIを活用するプロフェッショナルな3名が、「DASA 自律型AI組織変革(エージェンティックAI)ブートキャンプ」に参加し、「部分最適から全体最適へ」という視点を掴むことになった。
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システム運用高度化を推進——ソリューション推進担当の役割

——まず、お三方の業務内容と役割を教えてください。

鹿内啓恵氏(以下、鹿内氏)

ビジネス推進本部 デジタルイノベーション統括部 テクノロジー&ソリューション推進部 ソリューション推進担当の主任として、担当のリーダーを担っています。私たちの部署ではシステム運用高度化に向けてソリューション製品を調査・検証し、社内展開やお客様への提案まで担います。現場から運用高度化に関する相談が上がってくることもあれば、こちらから調査・提案することもある、全社横断支援組織です。

藤田諒氏(以下、藤田氏)

鹿内さんと同じ部署に所属し、ソリューション製品の検証や実装を担当しています。検証の背景や意図を理解したうえで、実作業を担うメンバーとして取り組んでいます。

上中太陽氏(以下、上中氏)

鹿内さん・藤田さんと同じ部署に所属し、ソリューション製品の検証や実装を行うのが主な役割です。まだ経験は浅いですが、日々の業務で手を動かしながら学んでいます。

2|

AIはすでに日常に——業務・プライベートでの活用

——業務・プライベートでのAI活用について教えてください。

鹿内啓恵氏
鹿内氏

業務ではCopilotを活用して、資料のポイントだけ書いて推敲してもらったり、メール文章の添削をしたりしています。プライベートではコミュニケーションの分析に活用しています。「この人は○○の場面でこういう発言をしたのだけど、どういう意図だと思う?」とプロンプトを入れると、瞬時に分析してくれます。また、GeminiはGoogleの各種サービスと連携していて、「暇つぶしできる場所がないか?」と質問するとGoogleマップで候補となりそうな場所まで出してくれます。いくつかの生成AIを使い比べて回答の傾向を確認するのが習慣です。

藤田氏

業務ではソリューションの調査にAIを活用しています。学生時代にアプリケーションの開発をしていたため、コードを書く際にAIを活用していました。プライベートでは悩みや課題を整理したり解決策を検討したりする際に活用します。

上中氏

業務ではCopilotを活用して、資料作成や議事録作成を行っています。大学2〜3年生の頃からChatGPTを使い始め、文章を自動で生成してくれることへの衝撃が今でも記憶に残っています。

3|

ブートキャンプへの参加動機——「漠然とした課題」を抱えて

——ブートキャンプへの参加動機を教えてください。

鹿内氏

弊社はITSM(運用・保守)領域において、「安定した運用」と「継続的な改善」を強みとし、お客様との信頼関係を長年築いてきました。限られた人材の中で運用高度化が求められる一方、生成AIの特性(ハルシネーションやデータ学習など)には慎重に向き合いながら、ITSMをさらに強化・発展させるためにAIを適切に活用していく必要があります。その適切な活用を実現するための最新技術やマネジメント手法を学べると期待して参加しました。実際には技術よりもリーダーシップや組織変革がメインテーマで、「AIを活用しきれない組織をどう切り開くか」という課題への答えが得られたと感じています。

藤田氏

エージェンティックAIが何なのかよく分かっていなかったので、まず理解したいという動機でした。システム運用・保守という自分たちの業務にAIエージェントが大きく関わると確信し、知っておくべき知識だと判断しました。

上中氏

AIエージェントへの興味が一番の動機です。業務でも社内でもAIという言葉はあふれていて、今後絶対に触れていかなければならないものだと感じていたので、ぜひ参加したいと思いました。

4|

「AIだけでビジネスが成立する」——ディスカッションで広がった視野

——ブートキャンプで最も印象に残ったことを教えてください。

鹿内氏

グループワークのディスカッションが非常に活発だったことに驚きました。最初は「自社の業務にAIをどう活用できるか」をテーマに議論していましたが、次第に話が広がり、「AIだけでビジネスが成立して、人間がベーシックインカムをもらう生活になったらどうする?」といったテーマにまで発展しました。そういう思考力の高い方々と議論できたのが刺激的でした。一方で、ブートキャンプの学びを自社にそのまま適用しようとすると難しい点は他社の方々も同じように感じていて、部分最適から始めて全体最適へ繋げていきたいという思いは多くの方々に共通していると感じました。

藤田氏

異業種の方とのディスカッションが新鮮でした。あるグループで「ベテランドライバーと新人ドライバーの所要時間の差をAIで分析し、暗黙知を抽出できないか」という話が出て、とても印象に残りました。後日、AI・DX関連の展示会で、暗黙知を抽出するAI製品を目にし、「実用段階に突入している」と実感しました。

上中太陽氏
上中氏

AIエージェントの概念や技術を学ぶと思っていたら、実は「組織ごと変革する」というテーマだったことが一番の驚きでした。普段の自分では持てない高い視座からの話が多くて、視野が広がりました。また、ディスカッションで自分が入社1年目(研修受講当時)として感じてきた職場の課題を話題にしたところ、他社の経営層・管理職の方々からも共感があり、組織の悩みは役職や業種に関係なく似ているのだなと発見がありました。

5|

「技術だけでなく、マネジメントと組織」——学びの本質

——ブートキャンプで得た気づきを、どのように業務に活かしていきたいですか?

鹿内氏

自律型AI組織を社内で作り上げていく際、今回学んだリーダーシップの理論を活かして引っ張っていく役割を担いたいと思っています。プロジェクトが進む中でDASA ARISEモデルなどの知見を使って継続的にパフォーマンスを改善していく手法も活かせると感じました。

藤田氏

運用・保守の業務でも遅かれ早かれエージェンティックAIに移行していく時代が来ると思っています。その時に向けて、今回学んだエージェンティックAI適合の考え方やマネジメント手法は必ず生きてくると感じており、早めに学べて良かったです。

上中氏

AIの具体的な技術を学ぶ研修ではなく、組織変革とマネジメントを学ぶ研修だと理解した上で参加すると、学びが深まると思います。若い立場であっても、プロジェクト全体を俯瞰して捉えるマネジメントの視座は必要になりますので、ぜひそういった方にこそ受けてほしいです。

6|

「進化し続ける技術と、変わらない価値」——これからの展望

——AIをこう使ってみたい、こんなことがしたいというアイデアはありますか?

鹿内氏

日常生活では、入浴時の負担を減らしてくれるAIロボットがほしいですね(笑)。お風呂で体を洗ってくれて、ヘッドスパもしてくれて、テレビも見せてくれて、寝ても大丈夫なロボットは、ビジネスとしても需要あると思います。業務では、フェイス・トゥ・フェイスでしか汲み取れないお客様の思いを大切にしながら、運用改善や高度化の領域にAIを適切に活用していきたいです。

藤田諒氏
藤田氏

学生時代からゲーム開発に関心があり、アイデアを考えることにも取り組んできました。最近では、人間が企画を考えれば、あとは全部AIに任せてゲームやアプリを開発できる時代になってきています。業務でも、アイデアや考えを伝えるだけでAIがデザインやレイアウトまで含めた資料を作成できるアプリを開発し、私自身は新規ソリューションの発掘・検証により集中できるようにしたいです。

上中氏

3年前に初めてChatGPTを使った時の衝撃が今でも残っています。同じような衝撃を、運用現場にもたらせるようなソリューションをAIと共に作ってみたいですね。そのためには、これからも新しい技術をキャッチアップして、現場における課題を認識しつつ、積極的に活用していきたいです。

「部分最適から始めて全体最適へ」——現場チームならではのリアルな視点が、ブートキャンプを通じてより大きな視野へと広がった。システム運用の現場を支えるソリューション推進担当の3名が、AI組織変革の第一歩を踏み出しつつある。

取材・文:中川悦子(DASA JAPAN) 2026年4月

プロフィール

鹿内 啓恵 氏

株式会社NTTデータSMS

ビジネス推進本部 デジタルイノベーション統括部
テクノロジー&ソリューション推進部 ソリューション推進担当

主任

ソリューション製品の発掘・推進を担う担当のリーダー。全社横断でのシステム運用高度化・自動化を推進する。

藤田 諒 氏

株式会社NTTデータSMS

ビジネス推進本部 デジタルイノベーション統括部
テクノロジー&ソリューション推進部 ソリューション推進担当

 

ソリューション製品の調査・検証・実装を担当する。学生時代よりゲーム開発・コーディングに親しむ。

上中 太陽 氏

株式会社NTTデータSMS

ビジネス推進本部 デジタルイノベーション統括部
テクノロジー&ソリューション推進部 ソリューション推進担当

 

入社2年目。ソリューション製品の調査・検証・実装を担当する。大学時代からAIに親しみ、新技術への感度が高い。

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