「今動かないと、大変なことになる」

受講者インタビュー

大手事業会社のIT変革リーダーが語る、自律型AI組織への道筋

AIの進化が組織のあり方そのものを問い直している今、IT変革の最前線に立ち続けてきたリーダーはこの転換期をどう見ているのか。エンタープライズ企業における自律型AI組織への変革は「急務」なのか、それとも「準備不足」なのか——現場からのリアルな声を聞いた。

2026年春に開催されたDASA JAPANの「DASA 自律型AI組織変革(エージェンティックAI)ブートキャンプ」に参加した大手事業会社 情報システム部 シニアアドバイザーの石田英理氏に、ブートキャンプでの学びとIT組織変革への展望を伺った。

石田英理氏

大手事業会社 情報システム部 シニアアドバイザー 石田英理氏

外資系・国内ITベンダーを経て、大手事業会社のIT変革を牽引してきたシニアアドバイザー。40年にわたるIT変革の経験を持つ石田英理氏が、「DASA 自律型AI組織変革(エージェンティックAI)ブートキャンプ」に参加し、「今動かないと大変なことになる」という確信を新たにした。
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外資系/国内のITベンダー/事業会社で培ったIT変革40年——キャリアの軌跡

——まず、これまでのキャリアについて教えてください。

石田英理氏(以下、石田氏)

外資系ITベンダーではSEからスタートし、IT戦略、ITガバナンス、ITマネジメント、エンタープライズアーキテクチャーのコンサルタントを務めました。その後、国内のITベンダーではIT戦略とアプリケーション、社内スタートアップ推進担当として活動。2019年より現職の大手事業会社 情報システム部に参画しました。外資系IT企業在籍時からIT戦略・エンタープライズアーキテクチャーを専門とし、一貫してIT変革に携わってきました。

——現職での取り組みについて教えてください。

石田氏

現職に来た時もモダナイゼーションの一環として、外部の専門家を交えてアジャイルを推進し、今ではアジャイル開発が主流になっています。

——AIについては以前から取り組んでいらっしゃったのですか?

石田氏

もともとAIを勉強はしていたのですが、変化が速いこともありいつも断片的だったと思います。AI駆動型組織への変革を体系的に学びたいと思っていたところに、信頼している同僚からこのブートキャンプを紹介していただきました。

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AIは日常業務のパートナーに——コンサルタントとしての使いこなし術

——業務でのAI活用について教えてください。

石田英理氏
石田氏

AIの活用レベルを私の部門対象に調査したところ、全員が使っていました。頻度もかなり高い。活用目的と効果については今後の調査となりますが、私自身は主に組織変革に関する自分の仮説をブラッシュアップしたり、議論の進め方の壁打ちをしたりしています。また、提案書・計画書・報告書の草稿作成、英文メールの作成・添削などにも幅広く活用しています。

石田氏

プロンプトのテンプレートはほとんど用意したことがないですね。コンサルタント時代に簡潔明瞭な日本語を書く訓練をしてきたので、そのままインプットできます。ただ最初に一度必ず入れているのは「あなたは~の専門家です」「MECEかつ論理的に考えてください」というような役割と思考の指定です。

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「バーニングプラットフォーム」——ブートキャンプで確信した「急務」感

——ブートキャンプに参加されて、いかがでしたか?

石田氏

「今動かないと大変なことになる」という危機感を、事例を交えて享受できたのが一番良かったです。コンサルティングでいう「バーニングプラットフォーム」——今まさに燃え盛る火の中にいるんだという状況を、具体的に実感できました。また、他の参加者の方々が現場での課題を率直にシェアしてくださったことで、業種を超えて共通する課題の輪郭が見えてきました。

石田氏

ワークショップの形式も印象的でした。今まで外資系で経験してきたのは1時間ブレイクアウトルームに入って戻ってくるような形式でしたが、今回は難しいテーマを短時間でまとめ上げて発表し合うスピード感がとても良かったです。皆さんが与えられたテーマに真剣に向き合っているのが伝わってきました。

——他の参加者との交流はいかがでしたか?

石田氏

若い方もいらっしゃいましたが、自分の考えをご自身の言葉で自分事として語られていたのを見て素晴らしいと思いました。ただ言われたことをやるだけではなく、いろいろ悩み考えながらここにたどり着かれたんだなと感じました。ディスカッションでは相手の発言を傾聴し、共感しながら対話が進んでいく場面が印象的でした。

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「意図の言語化」が鍵——自律型AI組織への変革論

——ブートキャンプの学びで、特に印象に残ったことは何ですか?

石田氏

「暗黙知のみでは競争優位にならない」という点が大きな気づきでした。製造業向けに職人の暗黙知を形式知化するエージェントAIを作っているスタートアップの話を伺いましたが、その暗黙知を競争優位にするためには、組織がそれに合わせて変革的に動いていかなければならない。暗黙知をAIによって再現可能な仕組みに変え、スケールさせるなどの必要性は疑いようもありませんが、「どうなりたいか」という意図をしっかり言語化して、社員に浸透させることが重要だということが理解できました。

石田氏

例えば、生成AIを使えば、組織変革の企画書の叩き台はすぐに出てきます。でも問題はそれを誰がどのように実行するか。CIOが「今やらなければならない理由(Compelling Reason to Act)」をメンバーの腹に響くように伝えられるかどうか。そこが変革の成否を分けると感じています。

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エージェントの爆発的増加——ガバナンスという新たな課題

——今後のAI活用について、どのような展望をお持ちですか?

石田氏

ソフトウェア開発の制約——開発期間・スキル・コストが大幅に下がることで、エージェント化は爆発的に進むと思います。エージェントが爆増すれば、それをオーケストレートするエージェントも増え続け、どこかの段階で人間の認知能力を超えてくる。そうなると今度はプラットフォームやインフラ能力にボトルネックが移ってくる。また、一つ上から見て本当にセキュリティ大丈夫か?他にリスクは無いのか?という問いも常につきまとう。そのあたりのアカウンタビリティを果たすためだとしても、全体のスピードはなるべく落とさないようにバランスを取ることが必要になってくる。つまり、重要なのがガバナンスです。

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これから受講を検討する方へ——「ノーススター」を見つける場

——このブートキャンプはどのような方に適していると思いますか?

石田氏

AIの進展に伴って「レディネス(準備)がまだ整っていない、どう準備したらいいかわからない」という方々にとって、一つのノーススター(北極星)になるのではないかと思います。変化のスピードが非常に早い中で、ここまで体系化されたフレームワークと実践的なワークショップで学べる機会は貴重です。迷っているならぜひ参加してほしい。

石田氏

私自身も今回の学びを反映した組織改革の計画を作りたいと思っています。まだ個人レベルですが、これから上位マネジメントと議論しながら進めていきたい。あまり悠長にやっている時間はありませんが。

「今動かないと大変なことになる」——IT業界で40年にわたりIT変革を牽引してきた石田氏の言葉には、現場を知るリーダーとしての重みがある。自律型AI組織への変革は、テクノロジーの問題ではなく、意図の言語化と組織の腹落ちという、極めて人間的な課題に行き着く。その問いに向き合い続けることこそが、変革の第一歩なのかもしれない。

取材・文:中川悦子(DASA JAPAN) 2026年4月

プロフィール

石田 英理 氏

大手事業会社

情報システム部

シニアアドバイザー

外資系IT企業(SE・IT戦略コンサルタント)、国内IT企業(IT戦略・アプリケーション、社内スタートアップ推進担当)を経て、2019年より大手事業会社 情報システム部に参画。外資系IT企業在籍時からIT戦略・エンタープライズアーキテクチャーを専門とし、一貫してIT変革に携わってきた。現職ではモダナイゼーション推進やアジャイル開発の導入を牽引。IT変革40年の経験を持つシニアアドバイザー。

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