「プロジェクトじゃない、プロダクトだ」―― 変革を“当たり前の習慣”に変える、ブレインパッド流AI組織改革の視点
DASA JAPANの「DASA自律型AI組織変革(Agentic AI)ブートキャンプ」に参加した株式会社ブレインパッド データタレントエクスペリエンスユニット マネージャーの宮地正達氏に、ブートキャンプでの学びとAI組織変革への展望を伺った。
*株式会社ブレインパッドは2004年設立、データ活用支援のリーディングカンパニーとして、200名を超えるデータサイエンティストをはじめビジネスコンサルタントやエンジニアが在籍する専門家集団。「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」を理念に、業種を問わず1,400社超の企業のデータ・AI活用を支援してきた。データ分析専業として国内で先駆けて上場した実績を持ち、プロフェッショナルサービスとプロダクト提供の両輪で事業を展開している。
銀行の営業から、業務コンサル、AIコンサルへ――キャリアの軌跡
── まず、宮地さんのこれまでのご経歴と現在のご担当業務について教えてください。
もともとは銀行に3年ほど在籍し、営業として法人融資を担当していました。その後、より幅広い領域に携わりたいという思いが強くなり、業務コンサルタントの道へ。物流分野に強みを持つ会社で、受注センターや倉庫などの構想立案から業務フロー設計、システム設計・導入教育までを一貫して手がける仕事に15年ほど従事しました。
ChatGPT3が出た頃に「これからはAIだ」と感じ始め、直近5年はAIコンサルタントとして活動しています。ブレインパッドにはデータ分析を受託する部門もありますが、私は組織や人を育てたい思いが強く、人材育成・組織変革部門に所属しています。研修コンテンツだけでなく、企業の文化そのものを変えることにこだわっています。
「一つのプロジェクトをやって終わってしまう」ことへの虚しさを10年以上感じてきました。倉庫も受注センターも作ったけれど、その先の変革が続かない。自分たちがいなくても勝手に変革が進んでいく世界をつくりたい、というのが今のモチベーションです。
AIを使い倒した経験を生々しく伝える――現場での実践
── ご自身もデータ分析を実施しながら、AIを強く打ち出しているのですか。
私自身はデータサイエンティストではないので、コーディングによる高度な分析はできません。ただ、Copilotのようなユーザーフレンドリーなツールは100%自分で使いこなした上で、顧客企業に行っても「こういうこともできますよ」と伝え、活用方法を一緒に考えていく。それを“部活”のような感覚でやっています。
顧客企業内に「AIコミュニティ」と言うグループを立ち上げ、数十人規模のメンバーを集めて、実際に手を動かしながら試行を重ねる。そうしたコミュニティ活動を運営しています。
「変革の方法論を学びたい」――ブートキャンプ参加の背景
── そもそも、今回のブートキャンプにはどんなきっかけで参加されたのですか。
いま取り組んでいるのはまさに“企業文化の変革”そのものです。プロジェクト単位では数多くの案件を手がけてきましたが、変革全体をどう体系的に進めるべきか、自分が所属する文化醸成チームでは手探りの部分がありました。そこを補強したいと思い、参加しました。
── 御社の中では、こうしたブートキャンプはどのように位置づけられていますか。
前述のCopilot活用など、AIコミュニティによる文化醸成の取り組みは各顧客企業で動いています。ただ、それを恒常的なサイクルとして、再現性を持って続けられるかというと、まだ道半ばです。私は「このサービスをもっと体系化できればよい」と考えるきっかけになりました。
「プロジェクトじゃなくて、プロダクトだ」――2日間で得た最大の気づき
── 受講されて、特に印象に残ったことを教えてください。
まずは、参加メンバーの目的意識が近かったことが非常に刺激になりました。AIが普及していく中でビジネスとして展開したい、事業部を変えたいというモチベーションを持った人たちと、どんな意識で何をやりたいのか壁打ちできたのは良かったです。
内容面では「プロダクト思考」という考え方が一番響きました。私はずっと業務コンサルタントとしてプロジェクト管理をやってきましたが、プロジェクトは個別性が強く、目的も期間も予算もバラバラで、それぞれで完結している。それらの知見をメニュー化(プロダクト化)することで、どんどん変わるテクノロジーに対しても、ある程度のポジションを持ちながら差分に対応していける――「アジャイルの良さってこういうことかな」と腹落ちしました。
もう一つ大事だと感じたのはKPI、つまり目標設定です。KPIが大事なことは重々わかっていますが、実務では「やること」に没頭しがちです。サービスとして、どんな目標を追いかけるかを常に考えるべきと再発見する機会になりました。
── 理論と実務、それぞれの視点から見て、ブートキャンプはどう映りましたか。
私自身、ずっと実務ベースでプロジェクトを動かしてきた人間なので、変革の進め方を体系立った理論として学ぶ機会はそれほど多くありませんでした。今回のブートキャンプは、フレームワークとして理論がしっかり整理されている内容だったので、これまで感覚や経験則で捉えていたものを、方法論として言語化し直せたのは大きな収穫でした。実務で積み重ねてきたことと理論を突き合わせられたので、腹落ちの度合いも深かったです。
── 難しさを感じた部分はありましたか。
プラットフォームエンジニアリングのような基盤の話は、ビジネス人材が学ぶには少し壁があるかもしれません。それ以外の部分は、ビジネス系の人であればおおむね理解できる内容だと思います。
多様なメンバーとの刺激――このブートキャンプは誰のためのものか
── どんな方におすすめのブートキャンプだと感じますか。
AIをまったく触ったことがない人よりも、一度AI活用プロジェクトや組織変革をやってみて「自分のやり方は正しいのか」と迷った経験のある人に向いていると思います。経験と組み合わせて考えられる人ほど、学びを深く消化できるはずです。
AI推進部の方や、対外的に説明する立場のコンサルタントなど、すでに課題意識を持っている方には特に響くと思います。基礎知識だけならYouTubeでも学べる時代です。私たちが価値として出せるのは、その知識を実践する中で何につまずくか、どこを深く考えるべきかという一歩先の話。今回のブートキャンプも、方法論そのものだけでなく、そこから気づきを引き出す設計になっているのが良いところだと感じました。
学びを“やりっぱなし”にしないために――ブレインパッドが目指す文化づくり
── ブートキャンプでの学びを、社内でどう活かそうとしていますか。
いま自分のチームでは、プロダクト思考の考え方をもとに、AI活用の文化醸成コンテンツをメニュー化する取り組みを進めています。どんどん変わっていくテクノロジーを横目に見ながら、コンテンツ自体を継続的に見直していく仕組みです。
── 研修を受けても現場で実践が続かない、という企業も多いと思います。どう向き合っていますか。
研修をやった、推進組織も作った、でも何も変わらない――そういうケースがとても多いです。一部のコアな人材だけがデータ・AI活用に取り組んでいるが、組織全体には広がらない。だからこそ、人を育てるというより“習慣をつくる”という発想に切り替えています。データ活用やAI活用が当たり前という空気そのものをつくってしまおうと。
そのために、顧客先に「AIコミュニティ」のような場をつくり、1年ほどかけて一緒に手を動かし、実際に現場で使ってもらって、どうだったかを持ち帰って振り返る――そこまで伴走して初めて習慣になります。研修だけで終わらせず、実践と組み合わせて長い時間をかけてやり切ることが、私たちの独自性だと思っています。
研修は受けた、プロンプトの書き方もエージェントの作り方も一通り学んだ、でも実際には誰もエージェントを作っていない――そんな状況で困っている方は、ぜひ声をかけてほしいです。企業のカルチャーそのものを変えていく、そのお手伝いができればと思っています。
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宮地 正達 氏 株式会社ブレインパッド データタレント・エクスペリエンスユニット マネージャー 銀行での営業職を経て、物流領域に強みを持つ業務コンサルティング会社へ。業務フロー設計からシステム設計・導入・教育までを一貫して担当し、約15年にわたりプロジェクトに従事。その後AIコンサルタントとしてのキャリアを重ね、現在は人材育成・組織変革部門にて、顧客企業に伴走しながらAI活用を組織文化として根づかせる取り組みを推進している。 |